澄んだ空の下で
進む道は都心とは真逆の方向だった。
あたしが住んでる街よりも栄えてない街。
どうしてこんな場所をチョイスしたんだろうと思うほど、辺りは何もない。
着くまでセナさんとの会話など何もなかった。
車を走らせて50分。
前、恭が住んでたマンションから2時間くらいの位置だった。
「え、ここですか?」
思わず車が停車してすぐに呟いてしまった。
以前、恭が住んでいた高級マンションとはかけ離れたマンション。
いや、アパート…
アパートと言っても決して綺麗とは言えないくらいのアパート。
あたしが住んでるマンションよりもヒドイ。
「そう。ここに恭が住んでる」
「え、ほんとですか?」
「うん。だから若菜ちゃんビックリするって、先に言ったじゃん」
「そーですけど…」
「車あるから恭は居るね、部屋に」
「……」
アパートの横に駐車場がある。
だけど、このアパートを目の前に、この高級車。
ありえないくらい浮いている車。
「もー、若菜ちゃん、早く降りて。俺、仕事遅れる」
「あ、はい。すみません…」
なぜか謝って、車のドアを開けて降りてしまった。
「203ね。じゃーね、」
そう言ったセナさんは運転席から助手席のドアを閉め、中からあたしに手を振った。
そして呆然と発進させて行ったセナさんを見つめてから、アパートを見つめた。
確かに、車は恭の車だった。
来たものの、どうしようか、暫く佇んでしまう。
だけど、チラチラ振る雪が、さっき居た街よりも振っていて、手が悴みだす。
「…寒い」
思わず呟いた口から白い息が出る。
マフラー…して来ればよかったな。
あまりにも居すぎたせいで、感覚がなくなりそうで、気づけば203の部屋の前で立っていた。