澄んだ空の下で
「悪いな、すげぇ汚くて」
苦笑いの恭の言葉に首を振る。
部屋は1LDK。
入ってすぐのリビングは特に言って何もない。
小さな冷蔵庫はあるものの、テーブルもない。
ただキッチンだけがポツンと寂しそうにあるだけ。
「お前さ、髪乾かせば?」
リビングを通り越して奥の部屋。
そこから顔を覗かせた恭はドライヤーを手にしてた。
「あ、うん…」
「突っ立ってねぇで来いよ」
「うん」
ぎこちなく返事をし、足を進ませ手渡されたドライヤーを手にすると同時にフワッと頭にタオルをかけられた。
「拭けよ。風邪引く」
「ありがと」
頭に乗っかっているタオルをとり、あたしはその場で腰を下ろして、雪で冷たくなってしまった髪を拭いた。
来たものの何をどうしたらいいのか分かんなくて、何故か居心地が悪い。
逢いたいとずっと思っていていたのに実際会うとどうしたらいいのか分かんない。
「つか、ぼっとしてねぇで早く乾かせって」
膝の上に置いていたドライヤーを奪った恭はコンセントを差し込み口にさして、熱風をだす。
そのまま恭の手があたしの髪に触れる。
「…っ、」
ほんとにほんとにあたしは何をしに来たのだろうか。
話す言葉が何も見つからない挙句、恭に髪を乾かしてもらっている。
恭の指が何度も何度もあたしの髪の間を通過していく。
その優しさに何故か瞳が潤む。
思い出すのは恭に好きって伝えた日の事。
″ごめん、若菜とは無理″
リピートされるその言葉に胸が苦しくなる。
平気で他の人は抱けるのに、あたしとは無理って、何よ…
「なんか飲む?飲むっつっても珈琲しかねぇんだよな。それでもいい?」
「あ、うん…」
ドライヤーを切った恭は立ち上がってキッチンへと行く。
その恭の背後をみて、深く深呼吸した。