澄んだ空の下で
「ま、あれだな。誰も知らない場所でただ居たかった」
「…誰も?」
「そう。身内の奴らが知らない場所な。って言っても俺には身内もなんも居ねぇけど」
「いる…でしょ?」
「いねーよ。もう縁切ったし」
「…え?どう言う事?」
「そう言う事。父親とは切ったって事」
「……」
「若菜がさ、一緒にアイツに会いに来てくれたその後、縁を切りたいっつった」
「…っ、」
何度かタバコを口に運んでいく恭はため息交じりで話してた。
俯いて、思い出す様に言葉を絞り出していく恭は表情を崩してた。
「ま、アイツの女もだけどよ」
「それってお母さんの事?」
「ま、そーなるな。けど、アイツお節介すぎてよくあのマンションにくんだわ。おまけにあの女…あの、俺と結婚するって言ってたやつ?アイツもくっからさ、いい加減うっとおしくなった」
「……」
「ただ、それだけ」
「ただ、それだけって…お母さん、恭の事、心配してたよ?」
「心配?今更?されても困るわ、今更…」
「……」
「俺のお袋はもうとっくに死んでる」
「……」
タバコの火を消しながら深く息を吐く恭はゴロンと後ろに倒れ、背を床に付ける。
両腕を頭の下にし、ぼんやりと天井を見てた。
なんて言ったらいいのかなんて分かんない。
だって、産んでくれた本当のお母さんは今、一緒に居る人だよね?
でも育ててくれた人は亡くなったお母さんで…
何かを言わなくちゃいけないって、そう思ってても頭の中がグチャグチャデ、余計に言葉をかき乱していく。