ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜

 だが、もうこんなことはおしまいだ。今度捕まえたら二度と自分の側から離さない。

 おせっかいな親戚連中が何を言おうが、どんなに反対しようが構うものか。

 今度こそ彼女と結婚し、一生をともに暮らす。昼もそして夜も……。


 *** ***


 そして今朝、彼の乗った馬車はようやく、再びソールズを目指していた。

 村が見えてきた。はやる心を抑え、ビロードのシートの傍らに積みあげた贈り物の箱に目を走らせる。

 大部分は世話になったキングスリー家へのお礼の品々で、ロンドン高級店のドレスや小間物類、帽子、高価な葉巻などが入っていた。

 だが、一つだけ彼女のために持ってきた衣装箱がある。中の三枚のドレスはどれもよく似合うはずだ。


 そして何よりもまず。

 このポケットのウェスターフィールド家に伝わる子爵夫人の指輪……。

 一年前に渡しそびれたこれを、彼女の左手の薬指に必ずはめてやる。
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