ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜

「彼女はどうしています?」

 サロンでひとしきり話が終わると子爵はすぐさま尋ねた。

 なぜまだ姿を見せないのだろう。やはり自分を避けているのか?

 もしかすると、また具合が悪くなったとか?


 キングスリー夫妻は具合悪そうに言葉を濁している。不安になって更に強く問いかけると、ようやく氏が口を開いた。

「実は……、その、ミス・レスターには以前からよい話がありましてな。あなた様もきっとお喜びいただけると思うのですが。彼女はお屋敷で、御妹君の家庭教師をしていたそうですな」

「ええ、まあ……」

 家庭教師? 彼女はそれしか言わなかったのか?


「実は隣村に最近赴任してきた若い牧師がいるのですが、これがまじめで教養もあるなかなかの好青年です。まだ一人身で、牧師館を切り回してくれる優秀なご婦人を希望しておりまして……」


 話がだんだん飲み込めてきた。彼の表情がみるみる険しくなったのに気づき、キングスリー氏は思わず口をつぐんだ。

 夫人が慌てて後を続ける。

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