ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜

「その……四日前ですわ。その牧師様をこちらにお呼びした折、ちょうど良い機会だからと二人を引き合わせましたの。ミス・レスターも、それはそれは乗り気でしてね。すぐにも向こうの牧師館に行きたいと言うものですから……」

「それで……本当に行ってしまった? 何てことだ!」


 子爵は信じられない思いでその話を聞いていた。

 屈辱感と痛みの交じった激しい衝撃が走る。

 まったく何てことだ! 自分が彼女をこれほど思っているのに、どうして彼女はそんなことができるんだ?

 これではまるで裏切りだ!


「子爵様、ご覧になって! わたしこういうのが欲しかったの」

 その時、気まずい沈黙を破りメアリーが嬉しそうに部屋に駆け込んできた。さっき子爵が持ってきた新しいドレスを身につけている。

 だがその浮き浮きした表情も、場の重苦しい雰囲気に合い、たちまち消えてしまった。

「どうなさったの? 何か悪い報せでも?」

 それには答えず、エヴァンは再びキングスリー氏に向き直った。無表情な顔に、目だけがぎらぎらした光を帯びている。

 夫妻は落ち着かなげに身体を動かした。

「では、ミス・レスターは今その村の牧師館にいるのですか? その牧師と一緒に? それはどこにあるんです?」
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