ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜

 子爵はしばらく、ランプの光と暖炉の炎に照らし出されたローズの姿を眺めていた。

 今彼女が着ているモスグリーンのドレスは、彼女が初めてウェスターフィールド邸に来た日を思い出して買ったものだ。


 彼はゆっくりとローズに近づき、声をかけた。

「やっぱりよく似合うね。それを見た途端、君にぴったりだと思ったんだ」

 立ち上がったローズは、彼に向き直った。戦意が薄れそうになるのを感じ、気を引きしめる。

「ありがとうございます……。でも自分の服が着たいわ。こんな美しいドレスでは、何かあったらと心配で……」

「すぐに慣れるさ。やれやれ、まったくひどい一日だったな」

 子爵はすっと窓辺に歩み寄った。


「ここは美しい館だろう? ぼくの父が母のために建てたんだ。母はここが好きで、夏には連れられてよく遊びに来たものだ。下の湖でボートに乗ったり釣りをしたりしたな。ぼくの数少ない家族の思い出がある場所さ」


 夕闇に沈む湖を眺めてつぶやくように言うと、彼はローズを振り返った。

 その強い眼差しに思わず釘付けになってしまう。

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