ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜
「同情してくれないのかい?」
「そんなことをおっしゃっているようでは、同情には値しませんわ」
二人の間の緊張が少しほぐれた。エヴァンがふっと微笑む。
「君をここに連れてきたかったんだ。こんな形で実現するとは思わなかったけどね」
「子爵様、わたしは……」
「またそんな呼び方を。ぼくの名はエヴァンだよ。忘れないでほしいな」
言いながらローズに近付こうとするが、彼女は数歩後ずさり首を横に振った。
「いったい何が問題なんだい?」
子爵が苛立ったように問いかけた。だがローズは彼の顔を見て心配になる。
「かなりお疲れみたい……。どうか今夜はゆっくりお休みになって。明日お話しましょう」
「いやだね」
「そんな駄々っ子みたいなことを、言わないで……」
たしなめるように言いかけた言葉が途切れた。彼がさっと手を伸ばし、細い身体をぐいと引き寄せたからだ。