ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜

 片手がローズの顎を持ちあげ、少し開きかけた唇にそっと指先が触れた。

 まるで壊れやすいガラス細工を扱うように、優しく繊細に。

 見開かれた茶色の瞳に困惑の色が浮かんだ。その目を見た途端、エヴァンはもうこれ以上耐えられないと思った。

 気がつくと、切羽詰まったように彼女の唇に口付けていた。

 激しく身じろいだ身体を、動くなとばかりに力いっぱい抱き締める。


 離れていた一年の間の渇きをすべて満たそうとするように、エヴァンはローズを抱き締めたまま、いつまでも離さなかった。

 最初のうちこそ抵抗していたものの、やがてローズの手も彼に応えるようにおずおずと上がり、指先を戸惑いがちに彼の髪に絡めてくる。

 ようやく顔を上げたとき、ローズも呪縛から解かれたように身動きした。

 激しいキスにまだぼうっとしている瞳を覗き込み、エヴァンがくぐもった声でささやく。

「君にどれだけ会いたかったかわかるかい? この一年、もう一度君をこの腕に抱き締めることばかり夢見てきたんだ。君とこうしているのがまだ信じられない気がする」

「でも……、お会いしてよかったのかどうか、わからないわ……」

 まばたきしてようやく応える。現実がゆっくりと立ち戻ってくるようだった。

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