僕の可愛いお姫様
ほんの少し先に立ち止まった私を認識して、「見知った影」が、俯いていた顔を上げた事が見てとれた。

ゆっくりとこちらに歩いてくる。
電灯に照らされた影は、やっぱり…。



「あぁ…瑞穂。」

思った通りの正体に、ホッと胸を撫で下ろす。
「変質者じゃなくて良かった。」と思った事が本音だった。

「遅いな。」

帰宅の事だろう。
遅いと言っても19時を過ぎた頃だ。
一人暮らし故、門限も無い。
父親みたいな事を言う瑞穂に、笑ってしまう。

「何が可笑しい?」

わけも解らず一方的に笑い者にされた事が気に入らないのか、瑞穂はいつもの仏頂面をしかめて見せた。

「ううん。お父さんみたいだなぁ…って。」

「………あっそ。」

納得したのかしていないのか分からないけど、瑞穂は面倒臭そうに頭を掻いて、息を吐いた。


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