僕の可愛いお姫様
「あのさ、梅雨李、もし莉世に何か聞い…「梅雨李?」

瑞穂が何か言いかけた時だった。
彼の背後から私に向けた声があった。
よく確認しなくても分かる。
顔を見なくても、声だけで分かるだろう。

「泉。」

瑞穂の背後に立つ、泉が居た。
ここに居る理由は、一つしかない。
私に会いに来たんだろう。
友人との約束はどうしたんだろう?
切り上げるには時間が早い。

泉は私に向けて、というよりも、「この状況」に向けて、苦笑いを浮かべていた。

「泉、どうしたの。びっくりした。」

「あぁ、うん。ごめんね、突然。
梅雨李に会いたくなって、抜けてきちゃった。」

今度ははっきりと私に向けて、にっこりと微笑む泉。
瑞穂の手前、少し気恥ずかしかった。

「でも…久し振りだったんでしょ?」

気恥ずかしさが消えず、私はモゴモゴとした口調になってしまう。

「うん。でも梅雨李より大切なものなんて無いから。」

泉は瑞穂がそこに居る事なんて構わないという風に、冷静に、ただ微笑んでいる。
「何なのか解らない」罪悪感が私の中にあって、瑞穂の顔も、泉の顔も、見る事が出来ない。
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