花びらとワインとキスと……
 そして花見の時間になり――――。

 予想したよりずっと参加者が少なくて、買ったビールも大量に余っている。
 電車の時間を気にして帰る人もポツポツ出て、結局残ったのは私と楠木くんだけになった。
 彼氏は仕事が終わってから来ると言っていて……まだ顔を見せていない。

「誰もいなくなっちゃいましたね……」

 暗闇に白く浮かぶ桜の花を見つめながら楠木くんがそうつぶやいた。
 花冷えというのだろうか……コートを着ていても寒くて、私は体を縮めて今の状態が妙にみじめに感じていた。

「あーあー……皆飲み散らかして帰っちゃうんだもんなぁ」

 意を決したように楠木くんはビニール袋に空き缶をつぶして入れ始める。
 私もそれを手伝おうと立ち上がったんだけど、足がもつれて大勢が崩れてしまった。

「先輩っ!」

 慌てて私の体を支えてくれた楠木くんに、そのまま私はおおいかぶさるように倒れる。
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