SAKURA【短編】
『ずっと、こちらに?
確か、ここはずっと空き家だったかと…』


『ええ、そうです
僕の祖父の持ち家です』


『お祖父様の?』


『ええ、ずっと昔に祖父が亡くなり
ほったらかしにしていましたが
僕はここからの方が病院に通うのが
近くて楽なんです
それに、ここには祖父の大切な思い出が沢山
詰まっていますから、少し手入れして
僕が住むことにしました
何よりも家賃が掛かりませんからね』


話しているうちに確かにあの時の医者だと


鮮明に記憶が甦る


『あの…』


と、言いかけて止めた


この桜の木の精霊の話をしたところで


バカにされるだけだ


そう、思った


第一、あんな夢みたいな話を


現実的な場所ではたらく医者に


通じる訳がない





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