SAKURA【短編】
これ以上居ることもないので
『すいませんでした、無断でお邪魔して…』
と、立ち去ろうとした
すると
『君は桜の木の下に
屍体が埋まっていると思うかい?』
医者が聞いてきた
あの時、同じ事を聞いた彼を一瞬で思い出す
あの時、彼は確かに言った
そんなことはないと
死んだものからは、
美しさは得られないとーーー
『いえ、思わないです』
動揺を隠しながらも私は答えた
『僕も思わないです
当然ですよね
そんな事、あるわけない
屍体が埋まってりゃ事件ですよ』
と、笑いながら言う彼に
私は
やはり現実的な考えをする人なのだなと
何故か
少しだけ、がっかりした
何かを期待していたという訳でもないのに…
けれど、
その思いはその人の一言で経ちきられた
『でも、精霊はいると思うんですよね』
さっきとは違う
とても、真面目な顔で言った
『精霊…ですか?』
帰ろうとしていた体を向きなおし
聞き返す
『祖父に聞きました
子供の頃にね
この庭の桜の木には精霊がいるとーー
100年に一度、
精霊は若い女性と恋をすることで
その精気を得て
そして、
また100年、生き長らえる…と』
『ほ、本当に…?』
『ええ、祖父が話してました
本当かどうかは知りませんけどね
興味ありますか?』
と、嬉しそうにその人が言う
『ええ、とても興味あります』
と、私が答えると
『この話を口実に
君を誘おうとしていても?』
その人がーーー
あの時の医者が
照れ笑いを浮かべながら言った
私が
『実はーー
聞いて頂きたいお話があります
信じて頂けないかもしれませんが…』
と、言うと
『紅茶でいいですか?
ティーパックなんだけど…』
今度は私が彼に笑いながら答えた
『是非、いただきます』と
彼の後ろで
桜の枝が微かに揺れた気がした
『すいませんでした、無断でお邪魔して…』
と、立ち去ろうとした
すると
『君は桜の木の下に
屍体が埋まっていると思うかい?』
医者が聞いてきた
あの時、同じ事を聞いた彼を一瞬で思い出す
あの時、彼は確かに言った
そんなことはないと
死んだものからは、
美しさは得られないとーーー
『いえ、思わないです』
動揺を隠しながらも私は答えた
『僕も思わないです
当然ですよね
そんな事、あるわけない
屍体が埋まってりゃ事件ですよ』
と、笑いながら言う彼に
私は
やはり現実的な考えをする人なのだなと
何故か
少しだけ、がっかりした
何かを期待していたという訳でもないのに…
けれど、
その思いはその人の一言で経ちきられた
『でも、精霊はいると思うんですよね』
さっきとは違う
とても、真面目な顔で言った
『精霊…ですか?』
帰ろうとしていた体を向きなおし
聞き返す
『祖父に聞きました
子供の頃にね
この庭の桜の木には精霊がいるとーー
100年に一度、
精霊は若い女性と恋をすることで
その精気を得て
そして、
また100年、生き長らえる…と』
『ほ、本当に…?』
『ええ、祖父が話してました
本当かどうかは知りませんけどね
興味ありますか?』
と、嬉しそうにその人が言う
『ええ、とても興味あります』
と、私が答えると
『この話を口実に
君を誘おうとしていても?』
その人がーーー
あの時の医者が
照れ笑いを浮かべながら言った
私が
『実はーー
聞いて頂きたいお話があります
信じて頂けないかもしれませんが…』
と、言うと
『紅茶でいいですか?
ティーパックなんだけど…』
今度は私が彼に笑いながら答えた
『是非、いただきます』と
彼の後ろで
桜の枝が微かに揺れた気がした