SAKURA【短編】
私の断固たる説得に負け
ぶつぶつ言いながらも用意をする樹を
置いて庭へ出る
そこには今もあの桜の木がある
私はゆっくりと近づき
いつものように目を閉じると
そっと幹に手を添える
『まだ蕾だね』
私がそう言うと
細く伸びた枝が微かに揺れる
私はまた木の幹に背中を押し付け
ゆっくりと呼吸をする
頬をかすめる緩やかな風に
春の訪れを感じた
そして
同時に
彼の気配を感じた
私は
ほんの少し
春が
好きになりつつあった
今年も咲くであろう
満開の桜を思い浮かべ
私は穏やかに微笑んだ
『SAKURA』
終
ぶつぶつ言いながらも用意をする樹を
置いて庭へ出る
そこには今もあの桜の木がある
私はゆっくりと近づき
いつものように目を閉じると
そっと幹に手を添える
『まだ蕾だね』
私がそう言うと
細く伸びた枝が微かに揺れる
私はまた木の幹に背中を押し付け
ゆっくりと呼吸をする
頬をかすめる緩やかな風に
春の訪れを感じた
そして
同時に
彼の気配を感じた
私は
ほんの少し
春が
好きになりつつあった
今年も咲くであろう
満開の桜を思い浮かべ
私は穏やかに微笑んだ
『SAKURA』
終


