お風呂上がりの望遠鏡
 
仕事が手につかなかった。

心配というより、今夜どうやって加奈ちゃんのことを聞き出すか、そればかり考えていた。


夕方、メールが入った。

『風邪で熱が出てしまいました。楽しみにしていたのにすいません』

すいません、じゃないでしょ。

『大丈夫なの?また今度連れてってあげるから、気にしないで』


予定が消失した。
膨れあがった妄想が泡と消えた。

あぁ、嫌だ、いやだ。



あっ、押領司クンに誕生日のお祝いを言ってない。

私は迷わなかった。

桃を買い求め、真っ直ぐ押領司クンの家に向かった。
 

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