お風呂上がりの望遠鏡
 
3階の通路の奥、鉄扉の前に立った。

耳を澄ましても通りの喧噪ばかりで、中の様子は推し量れない。

チャイムを押した。

返事はない。

もう一度、押そうとした時、ロックを外す音が聞こえた。


ドアが開き、押領司クンが顔をのぞかせた。

「大丈夫?」
「はい、だいぶいいです」

押領司クンはドアの隙間から顔だけを出したまま。

「これ、桃。むいてあげようか」
「あっ、ありがとうございます」

押領司クンはドアの隙間からすべるように出てきた。

「熱、まだあるの」


「あの・・」
「・・・」

「加奈ちゃんが来てるんです」
 

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