従順なふりする、彼は狼。
従順なふりする、彼は狼。
 
『あたし、キャリアアップを目指したいの。だから、しばらくは会えそうにないと思う』


そんな告白をしてから、彼の隆司とは疎遠になりつつあった。

キャリアアップを応援してほしかったわけじゃないし、理解してほしかったわけでもない。

ただ、男の人と肩を並べて仕事がしたい――その気持ちを、認めてほしかっただけ。





「あ、先輩、やっと見つけた!早く戻ってくださいよ、先輩がいないと会議が進まないんス…!」

「ごめんごめん、ちょっと休憩してたの。これ飲み終わったらすぐに戻るから、みんなも休憩しててって伝えてくれる?」


隆司に会わなくても平気になりつつある自分に気づいて落ち込んでいると、後輩の神谷君が息を弾ませながらやってきた。

あたしはとっさに笑顔を作り、飲みかけだったホットココアの紙コップを軽く上げてみせる。
 

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