白い金の輪
あの頃は貧しくて結婚式も挙げられなかった。
記念写真を一枚撮っただけだ。
銀婚式にも何も出来なかったので、金婚式には何か贈り物をしようと夫は考えていたらしい。
夫は枕元に置かれたティッシュペーパーを一枚取り、細く裂いてこよりをより始めた。
そして私の手を取り、
「薬指でよかったよな」
そう言いながら、指にこよりを結んだ。
「こんな物ですまないな。五十年間ありがとう」
申し訳なさそうに苦笑する夫に、私は深々と頭を下げる。
「いいえ。これからも、よろしくお願いします」
紙で出来た白い指輪は、どんな高価な宝石よりも、ずっと尊い物に思えた。
(完)


