白い金の輪


 数時間後、夫は意識を取り戻した。
 病室に戻された夫に面会に行くと、彼は弱々しく笑いながら言った。


「お母さんが泣くから、逝きそびれたよ」
「まだ逝かなくていいから、元気になって。今度は一緒に畑をしましょう」
「あぁ。それは楽しそうだな」


 夫は嬉しそうに目を細め、それからふと思い出したように尋ねた。


「今日は何日だ?」


 私が日付を答えると、夫は少し残念そうに小さく息をついた。


「そうか。結婚記念日は過ぎてしまったんだな。今年は五十年目だったんだが」


 言われて初めて気が付いた。
 私はすっかり忘れていたのに、夫は律儀に覚えていたのだ。

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