ポケットに婚約指輪
「びっくりしたよ。菫があんなにキレイになるなんて。一瞬誰が来た? って思って見惚れたよ」
「何を……江里子の方が。あなたの奥さんの方がずっとキレイです」
「江里子は大輪の花だよ。でもね、一緒にいて癒されない」
「そんなことこんなとこで言っていいんですか」
会社の会議室。
確かに今は二人しか室内にいないけど、いつ誰が入ってきたっておかしくない。
「菫がメールに返事くれないから」
「既婚者からの変なメールに返信なんてできません」
「変なって失礼だなぁ。業務連絡だよ」
「どこが……っ」
舞波さんの指が、私の手のひらを何度もなぞっていく。
それに動揺する自分が嫌だ。……嫌なのに、動悸は激しくなる一方でちっとも収まりそうにない。