ポケットに婚約指輪

誘いと拒絶



【仕事終わりました。手伝いは何時からが良いですか?】

【16時から会議室3で】


会話でも済ませれるようなそのやり取りを、メールでしてしまったのはなぜだったのだろう。

このとき私は動揺していて、舞波さんと普通の顔をして話す自信が無かったってのもある。

それ以外に、舞波さんとのやり取りをもうこれ以上刈谷先輩に見られたくないってのもあった。


でもよくよく考えると、そんな事までメールでやり取りする方がよっぽど意味深だったかもしれない。


*


 会議室の前で深呼吸する。
変に緊張するのはおかしい。仕事だもの、自然にしないと。

ちゃんと腕時計も外した。これで彼への拒絶のアピールくらいにはなるだろう。


「失礼します」

「やあ、待ってたよ」


舞波さんはパイプ椅子に腰掛けて手に持った資料を眺めていた。彼の前の長机にはたくさんの用紙が山積みになっている。

真面目な顔をしている時の彼はとても端整だ。駄目だと思っても惹き付けられそうになる。





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