ポケットに婚約指輪


「ではお会計はこちらで」


促されるまま、彼はレジに向かい、カードで会計を済ませてしまう。


「里中さん、悪いです」

「後で返してもらうからいいよ。別のことでね」

「別のことって……」


まさか、服の代金の代わりに一晩付き合えとか……。
言わないよね、舞波さんじゃあるまいし。



「じゃあ、次はこっち」

「え?」


次に連れられたのは、化粧品店。
アウトレットだから美容部員さんがメイクしてくれることもあんまりないはずなのに。


「これってどういう風に使うのかな。ちょっと彼女にやってみてくれない?」


言葉巧みに彼が美容部員さんを誘導して、私は自分では普段出来ないようなパッチリメイクをしてもらった。


「どう? 自分でも出来そう?」

「あ、はい。さっきいわれた感じでやればいいんですよね」

「そう。じゃあ、これ買うから清算してくれる?」


その中から、アイシャドウのセットを選んで買ってくれた。

そんな感じでアウトレットを一巡する頃には、私から最初の地味さは無くなり、彼と一緒に歩いていても釣り合わなさとかに身を縮こませるようなことは無くなっていた。

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