ポケットに婚約指輪

「大体こんなもんかな」

「あのでも、凄いたくさん買ってもらって」

「うん。今日だけね」


彼はそう言って笑うと手近の店の鏡の前に私を連れてきた。


「自分から明るい色を選んで着れば、君はとても綺麗だよ」

「……あの」

「初めて会った日も、綺麗な人だなって思ったんだ。だから、その後会社で会った時はギャップにびっくりした」

「そんなに普段は駄目ですか」


少し落ち込んでそういうと、彼は私の目の前で指を振る。


「考え方を変えてごらん。普段が駄目なんじゃなくて、磨けば光るって言ってるんだ。毎日君が自分で魔法をかければいい」

「自分で?」

「そう。あの披露宴の時のようなドレスは毎日は無理だろうけど、俺たちの給料なら大体この辺りの私を店のものなら普段から買えるでしょ」

「ええ、まあ」

「俺が魔法をかけれるのは一日だけ。あげれるのはきっかけだけだ。後は君次第。……どうなりたい?」


じっと私を見る彼の瞳に、吸い込まれそうな気持ちになる。
どうなりたいって。

……強くなりたい。
もっと自分が好きになれる自分になりたい。

心の底からそう思えて、なぜだか胸がつまって涙が浮かんでくる。
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