ポケットに婚約指輪
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「今日はありがとうございました」
送ってもらったアパートの前で、私はたくさんの紙袋を抱えながら大きく礼をした。辺りはもう暗く、車のライトを眩しく感じるくらいだ。
「そこまで丁寧にされると恥ずかしい」
里中さんはそう言って、私に上を向かせるようにの肩を軽く押した。
「でもこんなにたくさん散財させてしまって」
「それはまあ気にしなくても。また食事に付き合ってくれたらいいよ」
「はあ。でも」
「なに?」
口ごもった私に、彼が聞き返してくる。
言い出しにくくてもごもごと口の中だけで呟いていると、彼が顔を近づけてきてびっくりした。
「聞こえない」
近い、近いってばー!!
鼻がぶつかりそうなくらいの距離に、私は凄くどぎまぎしているのに、里中さんは平静とした顔をしている。
「や、あの。……刈谷先輩にばれるのが怖いんです」
刈谷先輩にばれたら、絶対舞波さんとの事を里中さんにばらされる。
そしたらきっと、……嫌われる。
今彼に軽蔑されたら、私はきっともう立ち直れない。