ポケットに婚約指輪
時は移り、お昼休み。
お弁当組はちょっとした会議で使う広めのデスクに集まり一緒にお弁当を食べる。
私は人数分のインスタント味噌汁を給湯室で作り、お盆にのせて持ってきた。
「どうぞ」
「ありがとう。菫は気が利くわねぇ」
気が利くわけじゃない。
これは、入社当初に刈谷先輩にしこたま仕込まれたからだ。
その後にも新入社員は入ってきているのに、未だに私がこれをやっているのは、私の指導力が無いからなのだろう。
「ああ、いいよねぇ。江里子は今頃ヨーロッパだっけ?」
「そうですね。一週間だそうです」
「舞波くんも将来安泰だよねぇ。江里子ってこのまま勤めるのかな、寿退社はしなかったけど」
「どうでしょうね。子供でもできたらって思ってるんじゃないでしょうか」
江里子にとって、ここはいい職場だ。
父親のコネがあるから、同僚たちは江里子に気を使っているし、資材部のという男性社員の多い部署での事務方仕事の為、待遇も悪くない。