ポケットに婚約指輪

そして人事総務部の出世株を夫に持ったという訳だ。

江里子はなんでも持ってる。
お金も愛情も仕事も。

ある人はいくらでも持ち続けるのに、他にはなにもない私からは彼が去っていく。


「菫? 箸止まってるよ?」

「あ、ホントだ。あは」

「どうしたのよー。ははーん。さてはアレだ。その彼氏とかいうのと昨日はお盛んだったのかな? 今度紹介してよ」

「そんなんじゃないです。あの。……また今度」


嘘をついた代償を、私はちゃんと払わなくてはならない。

このことはいつまでも言われ続けてしまうのだろう。
それこそ、本当に新しい彼氏が出来るまで。


……舞波さんだって、嘘ついていたくせに。
どうして彼はなんの代償も負わなくていいの。

じわりと浮かんでくる涙を隠すために、私は勢い良くお弁当を食べた。


誰を責めても仕方がないことはわかってる。
私にも否があった。
それもわかってる。

だけど、どうして私だけがこんなに辛いの。
そんな気持ちを消せない。

方向性を変えればいいのかしら。

もう愛せないなら憎む?


そうしたいけれど上手くできない。

彼を陥れようと思えば自分をも深みに落ちてしまうもの。


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