ポケットに婚約指輪

「それは、……最高の殺し文句だな」


ふ、と視界が翳ったかと思うと、唇を塞がれた。
これに素直に甘えていいんだと、そう思えることが嬉しくて涙が出そうになる。


「私のこと好きになってください」

「もう大分前から好きだよ」

「綾乃さんや、美亜さんより、好きになってください」


口にした本音を、司さんは笑って受け止める。


「終わった恋愛になんて、もうしがみついてないよ。そっちこそ、舞波の事はもう忘れたの?」

「忘れました」

「ホント」

「あなたが忘れさせてくれたんじゃないですか」


そう呟いた唇に、落ちてくる甘いキス。

忘れたいのに忘れられなくて、辛かった日々が遠ざかる。
忘れさえてくれたのは、あなたよ?

私もあなたを信じるから、あなたも私を信じて。


唇が離れると吐息が頬にかかる。
彼の伏目がちな表情はとても色っぽくて、背筋の辺りがゾクゾクしてくる。


「今夜は帰さないけど、いい?」


耳元で囁かれた言葉に、頷くことで返事をすると、そのままベッドに押し倒された。

左手を、押さえつけるように重ねあわせて、彼は私を上から見下ろす。


「全部、俺のものにするから」


呟きながら落とされるキスはとても丁寧で優しい。
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