ポケットに婚約指輪


「歩ける?」

「はい。大丈夫です」


胸を張ってそう言ってみたけど、あれれ、やっぱりなんだかフラフラする。


「……確かに、休ませなきゃって気にはなるなぁ」


はあ、と溜息を一つこぼして、彼は私の肩を抱いた。
情けない姿ばかり見せてしまって落ち込む。

怒られるのは自分が悪いから仕方ないけど、嫌われちゃったらどうしよう。


私の心配をよそに、司さんは吹っ切れたように顔をあげると、私を抱きかかえるようにしてホテルの入口へ向かう。


「明日は休みだし。泊まりにしてこうか」

「え? あの」

「目の前にあるのに利用しないのもなんだし」



無人のフロントで部屋を選んで、ためらいもなくエレベーターに向かう彼。

なんでそんなに迷いなく動けるの?
ていうか、え? ここに泊まっちゃうの?


「やっぱり菫はなんとなく危ないから。見えるところにつけとかなきゃダメだなぁ」

「え、ちょ、あの」


つけるって何をですか。
続きの言葉を言えずに目を白黒させているうちに、首筋をきつく吸われる。


「んー!!」

「大丈夫、髪で隠れるしね」


司さんはしてやったりという調子で部屋のドアを開ける。


「まだまだお仕置きしたりないから。休んだら覚悟しといてね」


ニヤリと笑う彼に、酔いも一気に冷めていきそうな気がした。









【fin.】


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