ポケットに婚約指輪
「……悪いね。こっちは他の男とそういう場所に行かれるだけで気が狂いそうになるほど嫉妬深いもんで」
「よ、余裕ないねぇ……」
「彼女を一人で放置しなかったことには感謝するけど。今度から休ませるときは健全なお店にしてもらえるかな」
「わ、わかった」
「まあもう行かせないけどね」
司さんはようやく武井さんの胸ぐらを離す。彼が苦しそうに呼吸をしているところを見ると、少し締めてた……?
「じゃ、彼氏さんも来たようだし俺は帰るね」
そそくさといなくなる武井さん。
残された私は、……まだ具合が悪くて立ち上がれない。
司さんは私の隣にしゃがみこんで、背中をさすってくれる。
「……なんで飲み過ぎた?」
ああ、司さんが不機嫌だ。当たり前かぁ。
「ごめんなさい。だって、……つまらなくて。飲むくらいしかやることがなくって」
「だったら途中で抜ければいいだろ」
「そういう訳にもいきませんよぉ」
彼に手首を引っ張られ、立ち上がる。今度は安心して体を預ける。大好きな司さんの匂いを思い切り吸い込んで泣きたくなるほどホッとした。
「迎えに来てくれて、ありがとうございます」
「むしろ途中で乱入したかった」
「……怒ってます?」
不機嫌な声のままの彼に心配になる。
まあでも、酔って他の男の人とホテルの前にいたんだから、怒られても仕方ないんだけど。
「怒ってるよ。……でも、俺の顔見た時のあの顔でチャラにしてもいいかなって気はした」
私を腕に抱いたまま、彼は優しく頭を撫でる。