ポケットに婚約指輪
「ねぇ。どこ行く? 私飲みたいなぁ」
「いや、今日は食事を中心にしようかと思って」
「そうなの?」
「この近くにおいしいパスタの店があるんだ」
メールの話は出さず、自然にお店へと誘導する。
まくし立てる刈谷先輩の話を上手く流しつつ、時折私に話しかけてくれる。
「塚本さんはいつ入社なの?」
「え? 私は四年目です」
「じゃあ彼女と一緒か。神田江里子さん。この間挙式した」
「そうです。同期です」
「そういえば、里中くん。何であの時帰っちゃったのよー」
刈谷先輩が割って入ってくる。
もともと私は人と会話するのはあまり得意じゃない。いつもならこれにほっとするはずだった。
なのに、何故か今は軽い苛立ちを感じた。