ポケットに婚約指輪

「待って。だったら皆で帰ろう。もう食べ終わったし。刈谷さんもそれ飲みきったら終わりでしょ?」

「えー、でも私まだ飲みたいなぁ」

「自分の後輩放って飲むの? それにここは飲み屋じゃないから、そろそろ出ないと他の客に迷惑だよ」

「じゃあ場所変えましょ」

「悪いけど俺も帰るよ。明日もまだ仕事あるしね」

「あら、そう」


刈谷先輩は不満そうな顔を隠しもしないで、残りのワインを一気にあおった。

彼女から注がれる視線が怖い。
だけど、里中さんが腕を放してくれないので、逃げるわけにも行かない。

準備をしてカウンターに向かう間も、私の足取りはおぼつかなかった。
そこまで酔っぱらった訳じゃないのに、刈谷先輩への恐怖がそうさせるみたいだ。

駅から刈谷先輩と二人になったらまた罵倒される。
いやだ。そんなの聞きたくない。


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