ポケットに婚約指輪
「酸っぱいのは平気かな。オレンジとミックスされてて、レモンって言っても飲みやすいよ」
「あ、ありがとうございます」
一口含むと酸味の利いた液体が、酔いで鈍っていた感覚を引き締めてくれるようだ。
「美味しいです」
きゅっと、胸に染みる。
美味しいから。嬉しいから。そして、……何故か悲しいから。
「……っ」
じわりと涙が浮かんでくる。
最近涙腺が弱い。どうしてこんなとこで泣きたくなるの。
気づかれたくなくて、前髪を直すふりをして顔を隠した。
「ごめんなさい。やっぱり凄く酔ってしまったみたい。先に帰ります。里中さん、素敵なお店に連れてきてくれてありがとうございました。とっても美味しかったです」
一気に言って、そのまま立ち上がる。
すると、右腕を彼に掴まれた。