好きと言えるその日まで
 *


 こいつは、どこへ遠足に行くんだ……?


 俺の想像を超える荷物に、大丈夫か? と聞いてしまった。


 本人は質問の意図が分からないのか首を傾げ、大丈夫ですと答えたが。


 いや、隣を歩く俺が大丈夫じゃない。


 葛西の家から出てきた母親は、聞かなくても分かるくらいにコイツそっくりで。


 さぞや賑やかな家なんだろうって一瞬で分かった。


 しかも第一声が


 「ごめんなさいね。今スカート脱がせてるから」


 って。


 脱がせてるってなんだ?


 とか思っていたらジーパン姿の葛西が満面の笑みで出てきた。

 
 よく分からんが、スカートでないことにホッとした。


 スタンドに立ってたら、ダメだろスカートは。


 

 ―――しかし、俺が女連れてきたって、皆ビビるだろうな……


 まだ誰にも葛西を連れていくことを言ってない。


 そのことを今頃になって少し後悔する。


 いや、言ってないことよりも、葛西に声をかけたことを、か?


 なんて思いながらも、嬉しそうな葛西を見ると、どうでもいいかと思えた。


 誰に迷惑をかけるでもなし、楽しんでる奴が一人増えたって問題ないだろ。


 
 
 他愛もない会話をしながら、何度か荷物の多すぎる葛西に『持つぞ?』と提案するも拒否されて。


 なんだか荷物持たせみたいな気分を抱きながら、近くのセンターまで15分の距離を歩いた。


 隣の葛西は、いつもよりも少しだけ俺に近い距離で歩いている気がする。


 遠慮がちでもなく、心底嬉しそうに「どんなところですか?」なんて尋ねる葛西。


 「普通」


 つまらないだろう返事をしながらも、そんな葛西を俺は、少しばかり可愛いと思えた。



 *
< 57 / 72 >

この作品をシェア

pagetop