好きと言えるその日まで
 「おっきー!!」


 想像してたより、普通に野球のできる施設でビックリして声を上げた。


 草野球なんて先輩が言うから、てっきりドラえもんとかに出てくるような空地を想像してたのに。


 全然、普通のとこじゃんか!


 「先輩、これは草野球じゃないですよね? 空地とかだと思ってたのに」

 「空地って……そりゃドラえもんだろ……」


 言いながら先輩に苦笑いされた。


 えー、草野球は空地じゃないの? なんて。




 しかし結構いっぱい人がいる。


 近づくにつれて先輩に群がってくる友達やら後輩。


 明らかに大学生か社会人っぽい先輩まで。


 こんな、すごい集まりだと思ってなかったし……なんだかドキドキしてきた。



 ―――どうしよう、私ココ来てよかったのかな?



 先輩の隣に立っていたのに、先輩が知らない人に囲まれていくうちに少しずつ距離が出来ていく。


 時折『あの子、誰? 彼女?』なんて追及されてたけど、先輩は見事に『そんなんじゃないっすよ』と軽くあしらってる。


 彼女だなんて名乗れるとは微塵も思ってないけど、そんなんじゃないって言葉に、じゃあどんなの? って思ってしまう。


 さっきまで近づいていたと思っていた距離が物理的にもどんどん離れて行って、いつの間にか先輩の連れであるのかもあやふやなほど離れてしまった。


 先輩、振り向いてくれないかな……


 もしかして、私のこと忘れちゃったのかな……


 嬉しかった気持ちがどんどんしぼんでいって、自然と顔も俯く。


 重くなかった荷物がやけに重さを感じてきてだるいなって思った瞬間―――


 「葛西。重いなら言えって言っただろ。ほら貸せ」
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