好きと言えるその日まで
 *

 葛西はやっぱりおかしなやつだと思う。


 大体のことは何考えてるか想像がつくけど、時々ニヤニヤしているのは見当が付かない時が多い。


 「何?」

 「べ、別に、何もっ」


 やっぱ、嬉しそうだ……まぁ、いっか。


 ベンチの背に両手を広げて空を見上げると、綺麗な青が広がっている。


 こんな青空の下、葛西と並んで座ってるなんて一年前の俺には想像もできなかった。


 けど―――今のこの状況を、俺は嫌じゃない。


 もう、薄々気が付き始めている。


 俺のこのイライラは、先輩として許される独占欲の範囲を超えてきたから起きていることだと……


 それをこいつが大きく受け止めているから成り立っているだけで、それが傍から見て許されるのか? といえば、もう無理が生じている気がするってことも。


 それでもまだ手を伸ばすには躊躇する。


 まだ、もう少しだけ。


 今の関係を崩さずにいたい。


 認めたい気持ち半分、認めたくない気持ち半分。


 どんどん葛西に引き込まれていく自分が怖くなってきていることに、俺は気が付いてきている。


 ただ怖いんだ、関係が変わるのが。


 それが葛西を苦しめている気がするけど、もうちょっとだけ我儘を許してはくれないだろうか。


 俺は多分、きっと、近いうちにコイツを


 ―――友香を……




 「行くぞ」


 声をかけて俺が立ち上がると、慌てて鞄に荷物をしまう葛西。


 いつもドタバタしてて、嬉しそうにしているコイツが……多分、俺は好きだ。


 立ち上がって準備できましたって顔で立つ葛西を見て、俺は一息吸ってから手を差し出した。


 首を傾げて、一瞬不思議そうにしてからおずおずと手を出す葛西に、フッと笑ってから手を伸ばして掴む。


 驚いた顔を見せてから、今度は顔を赤くする葛西に俺はまた笑った。
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