赤き月の調べ
ゆっくりと点いていく明かりを確認して、レジの後ろにある二つの扉のうち、小さな物置の扉を開く。
中にはコート掛けがあり、一番奥に掃除用具がある。
希空はモップと、ちり取りの付いたほうきを手に物置をでると、レジの下に置いてある音楽機器の電源を入れ、今の時間にぴったりのクラシックをかけた。
まずはモップで店内を隅々まで拭き、レジの横でモップを振って埃を落として、ほうきとちり取りで回収する。
まとめた埃をごみ箱に捨てて、音楽に揺られながら、今度は手持ちのモップでカウンターとレジ、足下にある音楽機器の埃を払う。
まだまだ時間はあるだろうと、希空は腕時計に目を落とした。
不思議なことに、開店までもう十五分しかない。