Dear...
「どういう事ですか?」


暗いけれど、表情はよく見える。あまり見つめると、恥ずかしそうに顔を背けてしまうので、窓の外へ視線を泳がす。
問い掛けに答えてくれなかったけれど、運転中なので、知らないふりをした。


「…どこ行くんですか?」


まず最初に気にすべき事を、走り出してから10分以上経った頃に初めて聞いた。


「行きたい所はある?」

「んー…私、先生の家に行きたいです。ダメ?」


自分でも何を言い出すのかと思ったが、一度捨てた恋だから。と、強気になっても平気な気がしていたのだ。

けれど、困っている顔を見て、さすがに謝ろうかと口を開きかけた。だが、一瞬早く、先生が返事をした。


「分かった」
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