Love Songを君に【Ansyalシリーズ TAKA編】





ふと、室内に
電話の着信音が広がる。



裕先生が受話器を取ると、
モニター越しに、
看護師さんの
慌ただしそうな姿が
映し出される。





「どうかした?」

『お話し中、
 大変申し訳ありません。

 雪貴君が
 居なくなりました』





えっ?


一瞬のうちに頭の中が
真っ白になって
体の力が抜けていく。




そんな体が許せなくて、
両足に力を入れて踏みとどまり、
痛みの刺激で、
自分自身を保ちたくて
わさど皮膚に爪を食い込ませる。




……大丈夫……。



今度は、
私がちゃんと雪貴を
守るんだから。





いつの間にか
私にとって
大きくなっていた
彼の存在に気がつけたから。




「わかりました。

 君たちは
 病院内を探して」



裕先生がそう言って、
受話器を置くと同時に
モニターが消えた。


悠久先生も
いつの間にか
部屋を飛び出した後で、
この場にはいない。
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