月夜の翡翠と貴方【番外集】
「……ごめんね」
か細い声で告げられた謝罪の言葉に、タツビが眉を寄せる。
はぁ、とため息をついて、ネオを見た。
「…だから、仕方ねえって。気にするなよ」
しかし、ネオはパッと顔を上げて「だって!」と言った。
「わたしのせいで、関係のないタツビをこんなことに巻き込んじゃったのよ?わたしが、わたしが……っ」
じわじわと、ネオの瞳が潤む。
辛そうに眉を寄せ、ネオはぎゅっと目をつむった。
「……わたしが、貴族だから……っ」
……ああ、そうか。
ネオが、貴族である自分を、誇れないのは。
「…わたしのこと、嫌いになったでしょう……?」
…『貴族が嫌い』なタツビに、嫌われるのが怖いからだ。
タツビは目を見開き、そして悔しそうに「だから」と言った。
「プリジアの人は、特別なんだよ。お前のこと、嫌いになるわけない」
「でも…っ、わたしといることで、タツビは」
言いかけた口を、私の手が塞いだ。
突然のことに、ネオが目をパチクリとさせる。
私は小さく笑って、「声、大きくなりそうだったから」と言った。