副社長は溺愛御曹司
それ、実践してよ久良子～、と和華さんが笑う。

私はパスタを巻きながら、はあとため息をついた。

ベテランの久良子さんたちには、ただのご機嫌斜めと思えても、私にとって、ああいうヤマトさんは。

ただ、ただ、怖い。



「すずちゃんがいなくなるんで、不安なんじゃないの」

「せっかく役職が板についてきて、見直してたとこなのに、ダメねえ」

「濱中さんに、影響がないといいんですけど…」



一番気がかりなことを口にすると、ふたりが、そのへんはフォローしておくよ、と心強いことを言ってくれた。








「何か、お仕事はございませんか」



濱中さんは定時で帰るので、それ以降はどうしても、私がヤマトさんに直接お伺いをたてることになる。

手元の業務が終了したところで、執務室に行くと、ヤマトさんは暁さんのＰＣをひざに置いて、キーを叩いていた。



「ないよ、ありがとう」



お先に失礼します、と言おうとしたのだけれど、口から出たのは、別の言葉だった。



「濱中さんには、もう少し柔らかく接していただけませんか」



キーを打つ音がぴたりとやんで、ヤマトさんが目を上げた。

まったく笑っていない、愛想すらいいとは言えない顔。



「俺の態度が、問題なの」

「…そう見えます」



静かな視線が、じっと私を射た。

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