副社長は溺愛御曹司
「お守り、効いたよ、ありがと」
「えっ、そうなの!」
開発への異動やら取りやめやらで、あんた、大丈夫? と心配してくれた紀子に、まずはお礼を言いたくて、打ちあけた。
本当は、こういうことこそ他言無用なんだけど、彼女に隠したままでいるのは、それこそ自分が許せない。
紀子は察してくれて、詳しくも訊かなかったし、口止めするまでもなく、誰にも言わないよ、約束してくれた。
「ていうか、そんなに効くなら、私にくれない、あれ」
「どうしたの」
「彼が、サンフランシスコに帰っちゃうって言いだして」
またか!
さっぱり和風美人で、すらりとスタイル抜群の紀子は、外国人にモテる。
本人もそういう相手が好きなので、彼氏はほとんど外国の男性だ。
けど、向こうの地元に嫁ぐほどの覚悟を持てる年齢でもなく、こっちに居ついてくれる相手を探すのも大変で。
私とは違う意味で、なかなか厄介な恋愛をくり返しているのだった。
ちなみに今の相手は、社内のグラフィッカーで、サンフランシスコ支社からの出向組だ。
ところでお守りって、転用していいんだっけ。
クリスマスカラーだけど奇抜じゃないネイルを施した指で、カレーを食べる紀子が、ため息をついた。
「彼が支社に戻れないよう、ヤマトさんに手回してもらえないかな」
「お守り持ってくるから、それで頑張って」
頑張るよ、もう! とプリプリしながら自分に喝を入れる紀子に。
彼女がクリスマスを楽しく過ごせるように、お守りに念を入れておこうと思った。