副社長は溺愛御曹司
「あるよ、絶対に開発に行ける方法」
久良子さんが、なんでもないことのように言うので、私は、え、と絶句した。
「正確に言えば、秘書じゃなくなる方法、かな」
「どんな方法ですか?」
思わず椅子をそちらに回転させて尋ねると、久良子さんは面白そうに私を見て、ヤマトさんならご存知かも、と秘密めかした。
なんだろう、そんなダークな手段なんだろうか。
「それより、クリスマスにもらうもの、決めたの?」
「いえ、あちらに選んでいただくことになっているので、私からは特に」
リサーチはしたものの、贈り物はサプライズでしょ、と、ヤマトさんは笑って、私にリクエストはさせなかった。
奥の机の和華さんが、へえ、と目を見開いてこちらを向く。
「彼、プレゼントってものを、わかってるじゃない、意外」
「そうね、見直したわ」
よかったね、ヤマトさん、株が上がりましたよ。
ちなみに彼は、私が決めきれないことをわかっていたんだろう、マネークリップ、と指定してきてくれた。
一度、落としたところを車にひかれて壊れたらしい。
「札束、車にひかれるって、すごいね」
「マネークリップ派か。どうりでたまに小銭の音、させてるよね」
「なのでカードも入る小銭入れとか、あわせて贈ろうかとも思ってるんですけど」
けど、適当にそのへんのポケットに小銭を突っこむのが、もうくせになっているヤマトさんなので。
あげたところで、使わなかったら、なんだしなあ、と思ってしまう。
そうねえ、とふたりも首をひねったところに、やっほー、と延大さんがやって来た。
「いよいよ、本チャンの契約書だよ。まだ草案だけど。ヤマトが終わったら、杉さんに回してね。週内戻しでよろしく」
「かしこまりました」
受けとって書類封筒に入れ、日付と時刻と戻し日時を書く。
大事なものなので、すぐに執務室に持っていこうと考えていたら、和華さんが彼に呼びかけた。
「ヤマトさんの喜びそうなクリスマスプレゼント、何かアイデアありません?」
「そりゃあ、神谷ちゃん自身でしょ」
当然のように即答した延大さんに、品性を疑いますわ、と久良子さんが冷たいため息をついた。