副社長は溺愛御曹司
「あ、ちょうどよかった、今、お前のPC、どんな状態?」
執務室に入るなり訊かれ、ログオフです、と答えると、ラッキー、とヤマトさんが自作のPCのほうで、何か打ちはじめた。
「ちょっと、リモートでいじるよ。メインのPCは、suzuko-kamiyaのほうだよね」
「はい」
何をしているんだろうと、持ってきた書類をデスクの見やすいところに伏せ、飲み物とトレイをサイドデスクに置く。
「開発に行く前に、現場のデータベースとか、見ておいたほうがいいと思うからさ。環境、整えておくよ」
「え、ありがとうございます!」
「ひとつのプロジェクトを、最初から追っていくと、わかりやすいと思うんだよな」
うーん、と考えこむように、拳を口にあてる。
少しして、よし、とまたキーを叩きはじめた。
目まぐるしく変わる画面に、どうしてPCの扱いに慣れてる人って、マウスをほとんど使わず操作できるんだろうと不思議になる。
「カズのいるプロジェクトにしよう。あそこは、流れが綺麗だから」
私もインストールしてあるグループウェアのトップに、いくつかのデータベースのサムネイルが追加された。
よく見ようと、デスクを回って、ヤマトさんの椅子の隣に立つ。
「お金の流れなんかは、まだ無視していいけど。企画からバージョンAあたりまでは、全部のトピックをチェックして…うわっ」
一緒に画面をのぞきこんでいたら、ふいにこちらを向いたヤマトさんが、突然、変な声を上げた。
驚いて見返すと、なぜか椅子ごと少し距離を置いた彼が、じろっと見あげてくる。