副社長は溺愛御曹司
「近いよ」
「普通です」
その視線が、一瞬私の胸元に移動したのを、私は見た。
ははあ。
今日着ているこのブラウスは、首回りが綺麗に開いているので、かがむとそれなりに中が見える。
ふーん、とヤマトさんを見おろして、にこっと笑ってみると、彼がきょとんと目を丸くした。
その首に腕を回して、上から抱きつくように、のぞきこむ。
身を固くするヤマトさんに、ゆっくりと、キスをすると。
一瞬、身体を引きかけた彼は、それでもすぐに応えて、私の身体に腕を回してきた。
その手が前に回って、胸元からすべりこんで来た時。
私は、サイドデスクに手を伸ばして、トレイを取りあげた。
「AVとか、バカにしておいて…」
滑りどめのゴム底がついた、金属のトレイで、思いきりヤマトさんの頭を殴る。
「いってえ!」
「完全に、その気じゃないですか!」
最低!
公私の区別もできない、サルめ!!
殴られた場所を押さえながら、悔しそうにヤマトさんがこちらを見あげた。
「誘われたら、乗るだろ」
「誘ってません。試したんです」
「今度試したら、また乗るからな」
「試しませんし、乗らせません」
ぎろっとにらんでやると、彼がチッと舌打ちをして、むっつりと再びPCに向かう。
私は、壁際にある予備の椅子を持ってきて、隣に腰を下ろした。