副社長は溺愛御曹司
でもCEOって、会社からすぐの豪邸に住んでるんじゃなかったっけ。

そう思っていると、読んだかのようにヤマトさんが笑った。



「今の家は、カズが家を出てからつくったんだよ」



カズというのは、和之(かずゆき)さんのことで、つまり弟さんだ。

そうだったのか。

私は一時停止を利用して、彼が寝てしまったので渡せなかった缶コーヒーを手渡した。

うわ、ありがと、という声と共に、プルタブの開けられる音がする。



「俺の小学校は、線路の向こうだな」



その懐かしそうな声を微笑ましく聞いてから、えっ? と思った。

てことは。



「中学校は、公立でした?」

「そうだよ、庶民的だろ」

「…あの、坂の上の?」

「うん…」



ヤマトさんも気がついたみたいだった。



私たちは、同じ中学校の出身だ。



ええっと思わず一緒に声をあげる。

ヤマトさんがコーヒーを持ったまま、助手席と運転席の間に身を乗り出してきた。

ちょっとちょっと、危ないから、ちゃんと座ってて。



「神谷さん、いくつだっけ、3年目?」

「はい、じき25になります」

「6つ下かあ。じゃ、校舎は一緒だな」

「第二グラウンドは、ありました?」

「2年の時に、できた」



すごい、本当に同じ中学校なんだ。

ヤマトさんは楽しそうに笑って、そうかお前、後輩かあ、と私の頭をぐしゃぐしゃとなでる。

わあ、やめてよ!

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