副社長は溺愛御曹司
あれ? と、ワイシャツの一枚を確認して気がついた。
「これ、私がお願いしたものじゃ、ないですね」
どちらですか、と優しい顔のおじさまフロントマンは眼鏡を直し、本当だ、と目を見開いた。
「ノブヒロ様のものですね、失礼しました」
「いただいていきます、こちらで渡しておきますから」
「本当ですか、申し訳ありません」
恐縮するフロントさんに手を振り、センターをあとにする。
延大さんが、なんでここにワイシャツを出すんだろう?
彼は常勤でもないし、そもそもオフィスにワイシャツを置いておく必要もないはずだ。
よくわからないながらも、まあ誰かの手間をはぶくに越したことはないと、そのまま持って帰った。
ゴンゴン、とガラスが叩かれる。
私を呼ぶ時に内線を使うことだけは、頑として聞きいれない不思議なヤマトさんだ。
まあ、このくらいは。
「これ、サイン入れたから、よろしく」
「ありがとうございます、拝見します」
私が立ちあがるより先に室内に入ってきたヤマトさんから、書類を受けとる。
とりに参ります、とか言うのも3回に1回くらいにとどめることにした。
この人は、夢中でPCに向かうか、元気に身体を動かしているかの、どちらかでいたいのだ、たぶん。
開発から回ってきた、ごく現場レベルの業務契約書を、指定どおりにサインが入っているか確かめる。
Hで始まる筆記体のサインに、いつも一瞬、誰のサインだっけ、と思う。
そういえば、ヒロカズさんなんだよね。
「これ、私がお願いしたものじゃ、ないですね」
どちらですか、と優しい顔のおじさまフロントマンは眼鏡を直し、本当だ、と目を見開いた。
「ノブヒロ様のものですね、失礼しました」
「いただいていきます、こちらで渡しておきますから」
「本当ですか、申し訳ありません」
恐縮するフロントさんに手を振り、センターをあとにする。
延大さんが、なんでここにワイシャツを出すんだろう?
彼は常勤でもないし、そもそもオフィスにワイシャツを置いておく必要もないはずだ。
よくわからないながらも、まあ誰かの手間をはぶくに越したことはないと、そのまま持って帰った。
ゴンゴン、とガラスが叩かれる。
私を呼ぶ時に内線を使うことだけは、頑として聞きいれない不思議なヤマトさんだ。
まあ、このくらいは。
「これ、サイン入れたから、よろしく」
「ありがとうございます、拝見します」
私が立ちあがるより先に室内に入ってきたヤマトさんから、書類を受けとる。
とりに参ります、とか言うのも3回に1回くらいにとどめることにした。
この人は、夢中でPCに向かうか、元気に身体を動かしているかの、どちらかでいたいのだ、たぶん。
開発から回ってきた、ごく現場レベルの業務契約書を、指定どおりにサインが入っているか確かめる。
Hで始まる筆記体のサインに、いつも一瞬、誰のサインだっけ、と思う。
そういえば、ヒロカズさんなんだよね。