花送り―宗久シリーズ番外―
放課後、私は中庭に咲く紫陽花を見つめていた。




霧雨に濡れる穏やかな色彩は、私の苦しみを少しだけ吸い取ってくれるんだ。







心が、落ち着く。









紫陽花の前に屈み込み、濡れた葉を撫でた。








ふと地面に、私の上に、影が被さる。









顔を上げた………途端。










胸が、疼いた。












「紫陽花、好きなんだ?」









新庄先生だった……。





私に傘を差しながら立っていたのは、新庄先生……。






どうして……。










驚きに身を竦めた私に、先生は優しい笑顔を向けた。




「廊下から、君がここに居るのが見えたから」





嘘……。


先生が私を、見つけてくれるなんて。








先生は笑いながら、私の隣に腰を落とした。







近い………。




先生の温もりが近い……。








「僕もね、紫陽花が好きなんだ。僕の実家にも古い紫陽花があってね?悪戯好きな花だけれど、優しい花なんだよ」






私は、声が出せなかった。



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