花送り―宗久シリーズ番外―
考えたくないよ。







先生は、誰に好きと言うの?



好きと言って、その人を抱きしめたりするの?



学校では見せない先生の顔を、見せたりするんだよね?







ずるい。




ずるいよ、その人。








先生を独り占めできるなんて……。









私だって、特別になりたいよ……。










私………こんなに先生を想ってるのに。











涙が溢れそうになり、私は校庭に視線を移した。








外は雨で……。




灰色の厚い雲が重なる空は、どんよりと重くて。



落ちてくる雫は、ひたひたと土をぬかるみに変えて。






まるで、私の気持ちを写しているかの様で………。










涙が、流れた。












こんなに先生を、好きになっていたんだ……。













校庭の周り、舞い終えた花びらの余韻さえ消えた桜の木々。





まだ薄い葉の色に衣更えした桜の木々。










景色は、これから長い梅雨が訪れる季節を予言していた。





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