Blue Note ― ブルーノート
「あそこ」
シイカの小さく丸い指が、二人の少年を指差す。 アノンはシイカを下ろすと、直ぐに少年達の元へ駆け寄る。
一人は地面に仰向けに倒れ、酷く昏睡(こんすい)していた。恐らくこの子が、シイカの言っていたゆーちゃんという少年だろう。
バックから2枚タオルを取り出し、1枚を横で立っていたもう一人の少年に差し出す。
「これ、水道で濡らしてきて」
「……え?」
「早く!!」
少年は一瞬ビクッと肩を上げ、直ぐさまタオルを掴んで水道へかけて行く。
アノンは少年を抱えると、ベンチに寝かせ、頭の下にもう1枚のタオルを敷く。
携帯を取り出し、救命センターへの番号を押す。
2、3回コールが鳴り、落ち着いた女性の声が返ってくる。
「子供が倒れました、すみません、救急車お願いします……はい……今、公園にいます……はい……南公園です……わかりました」
携帯を片手に、少年の首筋へ手を触れる。かなりの熱だった。40度、いやそれ以上かもしれない
人間の体温の限界は、個人差にもよるが一般的に42度とされている。
これ以上、体温が上がるがるような事があれば、血液中のタンパク質が凝固してしまう。つまり、まるでゆで卵のように、体中の血が固まり、止まってしまうのだ。
しかも、タンパク質は1度固まると2度と元には戻らない。
電話を切る頃に、濡れたタオルを持った少年が駆け付ける。
もう一人の少年の首にタオルを巻きながら、尋ねる。
「君はゆーちゃんのお兄さん?」
「うん」
「ゆーちゃんの様子が変だって、遊ぶ前には気がつかなかったの?」
「……今朝は元気だった」
「それじゃ昨日は?」
少し沈黙があり、少年が何とか聞き取れるほどの、か細い声で言った。
「熱が……少し」
「ちょっと待って」